赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「こんなマズいの、今まで飲んだ中で初めてなんだけど。まさかあなた────」
「行こう風花」
「っ……」
沙弥香さんが言いかけたタイミングで腕を引っ張られ、そのまま潤くんと一緒にその場から走り去った。
────
──
「大丈夫……? 来てない?」
「うん、大丈夫……っ」
数百メートル走り、路地裏に入って身を隠す。
「……ごめん。怖がってたのに、助けられなかった」
「そんな……! 連れ出してくれただけでも充分だよ!」
震える手を押さえて笑ってみせるも、目に涙が溜まって上手く笑えない。
泣いちゃダメ。だって事実だから。
現実を受け入れてると思ってたけど、本当はずっとぬるま湯に浸かってて。
何も言わずに受け入れてくれる潤くんの優しさに甘えてたんだ。
「ごめん、ちょっとだけ我慢して」
「えっ? わっ……」