赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
好きと言われて、一瞬心臓が飛び跳ねたものの、省略されている言葉に気づき、肩を落とした。
沙弥香さんは、以前話してくれた、学校の図書室で覚醒した時に血を分けてくれた人。
潤くんが吸血鬼として初めて吸血した相手だった。
噂では血が美味しいと、男子達に人気があったらしい。
だけど、潤くんの舌には合わなかったため、プライドが傷ついてしまった。
それ以来、ずっと敵対視されて、顔を合わせる度に嫌味を言われていたとのこと。
下の名前で呼んでたのも、名字を知らないからだったという。
元カノじゃなくてホッとしたけれど、あんな酷い人が初吸血だなんて……ちょっと複雑だな。
しばらく身を潜めた後、近くのバス停に向かった。
バスに彼女が乗っていないかを確認して乗車。
外から姿を見られないよう、右側の奥の席に座った。
「今日は本当にありがとう。色々巻き込んじゃってごめんね。首はもう大丈夫?」
「うん、平気。助けてくれてありがとう」