赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
第3章

君とふたり、有明の月

潤side



†††



「潤くん、朝早くからごめんね」

「風花のこと、よろしくお願いします」

「任せてください。旅行、楽しんでくださいね」



8月に入って数日。

うだるような暑さの中、雨村の家の玄関で風花の両親を見送った。

姿が見えなくなるのを確認し、扉を閉めて家に上がる。


現在の時刻は、朝の7時を過ぎたところ。

夏休みなのに、どうしてこんな早い時間に家に来たのか。


それは1週間前に遡る──。




『────えっ、泊まり?』

【そう。それで、風花ちゃんのところに一泊してほしいの】



7月下旬の昼下がり。

部屋で宿題をしていると、突然母親から電話がかかってきた。


なんでも、仕事場の人から旅行の招待券をもらったそうで。

話し合った結果、父親と風花の両親と4人で旅行することが決まったらしい。


ただ、そうすると風花が1人で過ごさないといけなくなるため、保護者代わりに1日だけ風花の家に泊まってくれないか、とのこと。
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