赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
突然自分自身を指差して尋ねてきたおばさん。
彼女に続いて、おじさんも自分自身を指差して、「覚えてる?」と尋ねてきた。
私……この家族と面識があるの?
お母さんの知り合いだから、どこかで会っているんだろうけど……誰だ?
「さすがにわからないかぁ。10年ぶりだもんねぇ。私達、ヤシロって言います。夜のお城と書いて夜城です」
「夜城…………あ!」
おばさんが出してくれた2つのヒントを元に記憶を辿り、思い出した。
毎年来る両親宛ての年賀状と、時々私宛てに来ていた手紙に書かれていた名字だ。
『いたっ!』
『ふうちゃん! 大丈夫⁉』
『大丈夫! これくらい平気だよっ』
幼き頃の記憶が流れ込んでくる。
困った時、いつも手を差し伸べてくれた優しい男の子……。
「もしかして潤くん……⁉」
「……久しぶり。風花」
衝撃の再会と事実に目を丸くした。
まさか、私の血を吸った吸血鬼が、幼なじみで初恋の男の子だったなんて──。