赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「さっきは叫んじゃってごめんね。朝早いからまだ眠いはずなのに……」
「いや。いつもこの時間に起きてるから全然」
引っ越す前は9時過ぎまで寝ていたけれど、祖父母と暮らし始めてからは、自然と早起きするようになった。
2人とも朝早く起きるから、物音とご飯の匂いで目が覚めるんだ。
「どっちから飲む?」
「あー……手の甲からにするよ」
ちょこんと目の前に腰を下ろし、手の甲を差し出してきた風花。
華奢な手を包み込むようにすくい、口元に持っていき……。
「……んっ」
青い血管に牙を立てて噛みついた。
呼吸の音と漏れる声。
本人は頑張って抑えてるつもりなんだろうけど……聞こえてるんだよな。
時々ビクッて振動するのも、全部伝わってくる。
ただ、指先の時よりかは小さい。
初めは慣れてないだけかと思ったけど、敏感だと聞いて納得。
だから今日は、比較的刺激が少ない手の甲から飲むことにした。
できる限り、理性を抑えないと。