赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「ねぇ、暇ならこっちに来ない? 他にも教えてほしい宿題があるんだけど……」



通話終了間際に、風花が千冬を勉強会に誘い始めた。



【え、いいの? おじいさんとおばあさんがいるんじゃ……】

「いや、今潤くんの家じゃなくて私の家なの。それに今日……」

「ごめん! 実験の途中だったのに、邪魔して悪かったな! また後でかけ直す!」

【え? ちょっ……】



──ブツッ。



「い、いきなりどうしたの……?」

「ごめん。さっき電話の向こうで実験してるような音が聞こえたから」

「そうだったの? 全然聞こえなかった。さすが吸血鬼なだけあって耳いいね」

「いやいやそんな。聞き間違いかもしれないから真相はわからないけどね」



ふぅ……危なかった。


もう少し千冬の力を借りたいところだったけど、今日は俺らだけ。

いくら幼なじみでも、泊りに来てると知られたら気まずい。

千冬には申し訳ないけど、我ながらいい判断だった。
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