赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
しかし、その数時間後。
「──え……? 腕から……?」
「うん。そろそろ次のステップに進もうかなって」
リビングで夕食を食べた後、またも風花が爆弾発言をした。
話によると、だいぶ吸血にも慣れてきたので、今度は腕から飲んでみるのはどうか。とのこと。
腕の次は肩へと、徐々に首元に近づけていく作戦らしい。
今の季節だと袖をめくる必要がないから飲みやすいけども……。
「本当にいいの? 手の甲よりも痛いかもしれないよ?」
「大丈夫! 吸血に痛みは付き物だし!」
諦めさせようと軽く脅したものの、決心が固かったようで、効果ゼロ。
風花は大丈夫と言ったけど、俺が大丈夫じゃない。
だって、腕から飲むなら、手の甲や指先の時よりも距離が近くなる。
ただでさえ精神ギリギリなのに、これ以上距離を縮めるのは危険だ。
はぁ……どうしてこのタイミングなんだよ。
今日は2人だけってわかってるよな?
さっき嘘ついて電話切った罰なのだろうか……。