赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「そう……じゃあ、痛かったらすぐ言ってね」
「うん。わかった」
差し出された華奢な腕にそっと触れた。
う、わっ……。
2度ほど掴んだことはあったが、あの時は緊急事態だったからあまり覚えていなかった。
改めて触れてみると、こんなに柔らかかったんだな。
感触にドキドキしながら、うっすら見えている血管にゆっくり噛みついた。
あぁ……やっぱり美味しい。
口の中に微かに残る甘みがたまらない。
できることなら毎日飲みたいくらいだ。
沙弥香先輩はマズいって吐き散らかしてたけど、あの人は美味しい血を飲み続けていたから、淡い味を感じにくくなっているだけだと思う。
「ごちそうさまでした。大丈夫だった?」
「うんっ。予想してたよりも痛くなかったよ」
ニコッと笑顔を見せた風花の頬が、少し紅潮している。
吸血時に限らず、時々こういう照れたような顔を見せてくるよな。
これもめちゃめちゃ理性揺さぶられるから、ちょっと控えてほしい。