赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
濡れたタオルを首にかけたまま、風花の部屋のドアをノックした。
……なんか、やけに静かだな。
「おーい、聞こえてる?」
ドンドンと強めに叩くも、返事がない。
これだけ呼んでも反応がないということは、まさか……。
嫌な予感がしつつもそっとドアを開けると、案の定、ベッドに横たわっていた。
「風花、お風呂いいよ」
「…………」
枕元で呼ぶも、反応なし。
おいおい、寝るなんて嘘だろ……。
念の為もう1度確認する。
今日はおじさんもおばさんもいない。この家にいるのは俺達2人だけ。
風花のことだから狙ってるつもりは更々ないんだろうけど……本当にやめてくれないかな。
「ほら風花。起きて。お風呂」
「ん……るさぃ……」
再び呼びかけると、眉間にシワを寄せてブンと腕を振ってきた。
あっぶな。ってか今、うるさいって言わなかった? 俺のことおばさんと間違えてる?
邪魔されて嫌だったんだろうけど、真夏にお風呂に入らないのはジメジメして気持ち悪い。
せめてシャワーだけでも浴びたほうが……。
腕を振った反動で仰向けになった風花に再度声をかけようとした、その時。
「……なにこれ」