赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―

ずっとだんまりだった潤くんが心配で声をかけてみたけれど、色んな瓶の香りを嗅いで楽しんでいる様子。

元が自然素材なため、そこまで刺激はないとのこと。


癒やされている姿を見て胸を撫で下ろし、隣の商品棚に移った。


あ、ボディクリームだ。

まだ暑いけど、冷房で乾燥するから肌カサカサになっちゃうんだよね。せっかくだし保湿しておこうっと。



「わぁ、いい匂いですね」

「えっ? うわっ!」



テスターを手と肘下に塗っていると、背後から沢村先輩が現れた。

ビクッと肩を揺らしたのもつかの間。



「うーん、これはバラかな?」

「あっ、ちょっ……」



先輩はクリームを塗った手を掴み、そのまま自身の顔に近づけて香りを確認し始めた。


これも……作戦の1つ、なんだよね……?


仲睦まじく話そうと決めてはいたけれど、手を握られるのは聞いてない。

どうしよう、怖いけど振り払うわけには……。


手元を直視できずに目を逸らし、早く解放されるのを待っていると──。
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