赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


……へ? どういうこと? 他の人の血はダメ? 飲めなくなったってこと?


でも私、Fマイナスだよ……?


上中下の下。その中でも、下の下だよ? 最低ランクだよ?

私よりもランクが高くて健康な血の人、いっぱいいるはずなのに。

どうして私の血じゃなきゃダメなの……?


疑問に満ちた眼差しで見つめる。



「話すと長くなるんだけど……聞いてくれる?」

「うんっ」



その場に座り直し、彼の説明に耳を傾ける。



「まず、吸血鬼の覚醒時期は知ってる?」

「うん。12歳から14歳頃だっけ」

「そう。で、大半の吸血鬼は、覚醒の1年くらい前から前兆が現れる。鉄分を含んだ物が無性に食べたくなったり、血を見たら動悸がしたり。でも、俺はそういうのが全く現れなくて、突然学校で覚醒してしまったんだ」



潤くんが吸血鬼として目覚めたのは中2の秋。

図書室で委員会の仕事中に、本で指を切った先輩を見た時だったそうだ。
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