赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「デートに誘おうか考えたんですが、お互いに受験の準備で忙しいので、あまり長い時間は会えないかなと思い、断念しました」

「そうなんですか……。彼女さんは他校の人なんですか?」

「はい。会えたとしても、下校中の数分間くらいですね」



連絡は週に1度は取っているとのことだが、3年生になってからはあまり会えておらず。

なのでせめて誕生日は直接祝いたいのだそうだ。


相当寂しいんだろう、眉尻が下がってしょんぼりしている。



「彼女以前に友達でもあるので、変に気を遣うことはないんですけど、この時期になるとだんだんみんなピリピリしてくるじゃないですか」

「そうですよね。高校受験の時はどうだったんですか?」

「入試まで時間があったので、そこまでピリついてはいませんでした」



沢村先輩に静かに見守られながら話を広げる。


ついこの間、学校のパンフレットを持った3年生らしき人が、生徒指導室から出てきたのを目にしたことがあった。

……あの人、ものすごく暗い顔してたんだよね。
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