赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
話の流れで、ふと、見た目も中身も完璧な先輩の恋愛事情が気になり、思いきって尋ねてみた。
校内で名が知れているから、相当モテていそうだけど……。
「……いましたよ。今は別れてますが、小学生の頃からずっと好きだった子が1人」
前を向いたまま、ポツリと答えた沢村先輩。
その横顔は、いつもより少し寂しく見える。
「どんな人だったんですか……?」
「新淵とその彼女と同じくらい、すごく優しい子でした。中学も同じで、クラスは別でしたが、一緒に登下校してましたね」
切なく笑って思い出を懐かしむ姿に胸が締めつけられた。
新淵さんと同じくらい一途で、別れた今も、その人のことを大切に想っているんだなと感じられた。
「別れた理由って、何だったんですか……?」
「思春期によくある、些細なケンカです。
彼女である前に大切な友達でもあったので、雨村さんの話を聞いた時、僕みたいな後悔はしてほしくない、時間をかけてでも、仲直りしてほしいと思いました」