赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「前兆がある人よりも、ない人のほうが覚醒した時の衝動が強い。だから抑えるのが大変で……。でも、先輩がすぐ血を分けてくれたから、大事にはならずに済んだんだ」



中学時代、同級生が前兆の影響で早退していったのを見たことがある。

すごく苦しそうだったから、前兆がない人の衝動は計り知れないのだろう。


噂では、強いストレスを抱えている人ほど、衝動も激しくなるらしい。


潤くんがあまり苦しまずに済んでホッと一安心。

したのもつかの間。



「ただ……その後が問題で。それからは、友達に血を分けてもらってたんだけど……」



口がひきつり、眉間にシワが寄った。

美味しくなかったんだなって、表情だけでわかった。



「友達には申し訳なくて、ずっと我慢してた。けど、やっぱり戻しそうになるから他の人に頼んだんだ。でも……」

「口に合わなかったの……?」

「……うん。同級生全員ダメだった」
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