赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


急いで席を立って掴んだものの……1枚だけ窓の外に飛んでいってしまった。

そんな、嘘でしょ……⁉ この1週間の努力の結晶が……!


中庭を見渡すと、中央にある大きな木に引っかかっているのが見えた。



「ちょっと取ってくる!」

「ええっ⁉ んな無茶な!」



止めようとしてきた柚季ちゃんを無視して、全速力で中庭へ。

幸い枝の端に引っかかっており、少しだけ登れば取れる場所にあった。



「よしっ、絶対取ってやる!」



昼休み終了5分前のチャイムが鳴る中、木の枝に足を引っかけた。


傍から見たら、一体何事⁉ ってガン見されそうだけど、今はそんなの気にしてる場合じゃない。

またいつ突風が吹くかわからないんだから、飛ばされる前に急いで取らないと。



「うぅっ、あとちょっと……」



枝に跨がってゆっくり進み、葉っぱの中に顔を突っ込んで手を伸ばす。

あと少し、あと少し……っ。




「……よしっ! やった!」
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