赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


久しぶりの指先からの吸血。

吸われている感覚や痛みよりも、柔らかい唇とその熱にドキドキして、体温がぐんぐん上昇していく。



「ごちそうさまでした。ありがとね」

「……どういたしまして。タチ悪吸血鬼さん」



痛かった。早く終わってほしかった。
けど……嫌じゃなかった。

今までこんなこと思わなかったのに。


急に恥ずかしくなって、聞こえたかわからないぐらいの声で言い返してみたら。



「心外だなぁ。タチ悪いって初めて言われたよ」



言った後に気づく。彼はとてつもなく耳がいいことを。



「この前は誠実の塊だって言ってくれたのに。ショックだなぁ」

「わぁぁぁ! ごめんなさい! もう言わないから! それ以上は勘弁してください!」



再び吸血しようとする彼を叫んで阻止する。

今でさえまだドキドキしてるのに、また指先から吸われたらたまったもんじゃないよ……!
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