赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「撤回するから! 訂正するから! 潤くんは誠実さと優しさの塊です!」

「……そこまで言うなら許す」



掴まれていた右手が解放されて、ホッとして体の力が抜けた。

と、思いきや。



「その代わり、傷、治させて」



こっちに詰め寄ってきた潤くん。

前髪が分けられて絆創膏を剥がされると──額に柔らかな感触と同時に熱が広がった。



「いきなりごめんね。その顔のまま外に出たら、他の吸血鬼に狙われちゃうから。あと、おじさんとおばさんも心配すると思うし」

「あ……ありがとう」



突然のことで頭が追いついていかない。


えっと、今、傷を治してくれたんだよね。

指先を切った時と同じ要領で、舐めて治してくれたんだよね。


……キス、したわけじゃないんだよね……?


軽くパニックになっている間にも、今度は髪の毛が耳にかけられて、頬の絆創膏を剥がされた。



「……すぐ終わらせるから」

「うん……」
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