赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「あっ、無理はしてないよ! 大丈夫!」

「いやっ、俺が大丈夫じゃないから……」



心配をかけないよう急いで口を開いたが、なぜかかなり動揺している。

大丈夫じゃないってどういうこと?



「……あ! 別に向かい合わせになる必要はないよ! 後ろからだから!」



もしかして、顔が近くなるから気まずいのかな?

そう思い、慌てて説明するも……まだ動揺している様子。

なんか頭まで抱え始めたし。一体どうしたんだろう?

飲むだけなのに、そんなに悩むこと……?


授業開始5分前のチャイムが鳴り、それぞれの校舎に戻る。



「風花の気持ちはよくわかった。けど、もうちょっと後でもいい?」

「いいよ。何か用事でもあるの?」

「うん。少し整えておかないといけないから……」



ちょうど金曜日が月食なため、観賞も兼ねて行うことに決まった。


オッケーをもらったのは良かったけれど……整えるって? 健康状態とか?

私達人間にはわからない吸血鬼事情があるのかなと考えながら別れたのだった。
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