赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
しかし──。



「ごめんなさい。今回は雨村さんだけでお願いします。その友人、かなり繊細で。人が多いと緊張させてしまうかもしれないので」

「そうですか……」



困ったなぁ……。

経験値は積みたいけど、あまり心配はかけたくない。

断ろうにも、潤くんが参加できないならごめんなさいってわけにもいかないし……。



「……わかりました。週末空けておきます」

「ありがとうございます。詳しい日時は今週中に連絡しますね」



承諾した途端、先輩はわかりやすく表情を変えて小走りで去っていった。


ちょっと不安だけど、喜んでくれたみたいだし。

後で潤くんに話せば大丈夫だよね。


その放課後。吸血を終えた後に早速報告した。



「そっかぁ。友達のためなら仕方ないね」

「うん……。なんかごめんね。一応話しといたほうがいいと思って」

「ううん。教えてくれてありがとう」



穏やかな表情を浮かべる潤くんだけど、「俺も参加したかったなぁ」と、少し悔しそうに溜め息をつかれて、罪悪感が湧いた。
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