赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
予想していた通り、二の腕よりかは痛くない。

けど……シャツを掴む右の手の甲に潤くんの手が重なって、これじゃまるで後ろから抱きしめられているみたい。



「じゅ、潤く……」



のどから絞り出して名前を呼べば、応えるようにギュッと手を握られた。

痛気持ちいい感覚と手の温もりが、胸の鼓動を加速させ、大きくしていく。

さらに、急激な体温上昇により、全身が火照ったように熱い。


座っているのにフラフラしてきた。

もう、ダメ。倒れそう……っ。



「……風花!」



牙が抜かれたと同時に一気に脱力し、後ろに倒れ込んだ。



「ごめん、苦しかった……?」

「っ……少し、だけ……」



頭がふわふわして、「大丈夫だよ」と言えず。

起き上がる力もなく、寄りかかったまま肩で呼吸を繰り返す。



「本当にごめんね。落ち着くまでいいよ」

「ん……ありがとう」



はだけた服を直した後、優しく背中を擦り始めた潤くん。

意識が朦朧としているのをいいことに、しばらくの間彼に体を預けた。
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