赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「お、夜城くん。こんばんは」
「あっ、こんばんは」
「トイレで会うなんて奇遇ですね。もしかして月食観賞してたんですか?」
「はい。先輩も観てたんですか?」
「ええ。家で観る予定だったんですが、勉強してたら遅くなってしまいまして」
「さすが学年5位。熱心ですね」
──ジャー……キュッキュッ。
「……あの、あなたの目的は一体何なんですか?」
「ん? 目的?」
「風花をどうするつもりかってことです。
一見協力しているように見えますが、僕には彼女の弱みを握って、純粋で優しい心を弄んでいるようにしか見えません。
まさか、そのうち人体実験をするつもりじゃあありませんよね?」
「アハハハハッ! 面白い冗談ですね。そんな物騒なことは致しませんよ。
僕は純粋に、彼女の心が晴れることを願っているだけですから」