赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
バッグからスマホを取り出す。
えっと、待ち合わせはパン屋さんだったよね。名前は……。
今一度お店の名前を確認しようとメッセージアプリを開いた、その直後。
──ブーッ、ブーッ。
スマホが震え出して着信画面に切り替わり、沢村先輩の名前が表示された。
「はいっ、もしもし。雨村です」
【もしもし。沢村です。今どこにいますか?】
「駅の中にいます。今入ったばかりです」
【そうですか。実は、待ち合わせ場所にしていたパン屋なんですが……】
通話しながら、すれ違う人達を避けていく。
どうやらお店の外に行列ができており、突っ立っていると邪魔になりそうだったため、急遽場所を変更したいとのこと。
友達も一緒にいるんだって。
「わかりました。どこへ行けばいいでしょうか?」
【そうですね、今僕達、百貨店の近くにいるんです。誘導しますので、通話のままにしていただけますか?】
「はいっ」
【ありがとうございます。ではまず、切符売り場を通り過ぎてください。そしたら、右側に通路があると思うので、そこを通って──】