赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
鼻腔をくすぐる、甘くて独特のある香り。
テレビのCMで見た、様々なデザインのロゴ。
カウンターでは、身なりを整えた制服姿の女の人が、女性客に笑顔で商品を勧めている。
中には、店員さんにお肌のチェックや化粧をしてもらっている人も。
「あの、化粧品売り場に来たんですが……本当にここで合ってますか?」
【はい。僕達も今入ったところです。そのまま進んでください】
ドアから離れたところに移動し、先輩に確認を取った。
どうしよう、色んな匂いが充満しているこの場所は、潤くんには刺激が強すぎる。
彼の姿があるか振り向いてみたものの、それらしき姿を確認できなかった。
……見失っちゃったのかな。
切符売り場、ズラーッと並んでたし。
電車が到着した時間と被っちゃって、改札口からお客さん達がぞろぞろ出てきてたし。
これだけ人が多いのなら仕方ないよね。
でも、鋭い潤くんなら大丈夫。きっと見つけてくれる。
もしダメだったら、先輩達と落ち合った後にこっそり連絡しよう。