赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


鼻腔をくすぐる、甘くて独特のある香り。

テレビのCMで見た、様々なデザインのロゴ。


カウンターでは、身なりを整えた制服姿の女の人が、女性客に笑顔で商品を勧めている。

中には、店員さんにお肌のチェックや化粧をしてもらっている人も。



「あの、化粧品売り場に来たんですが……本当にここで合ってますか?」

【はい。僕達も今入ったところです。そのまま進んでください】



ドアから離れたところに移動し、先輩に確認を取った。


どうしよう、色んな匂いが充満しているこの場所は、潤くんには刺激が強すぎる。


彼の姿があるか振り向いてみたものの、それらしき姿を確認できなかった。


……見失っちゃったのかな。


切符売り場、ズラーッと並んでたし。

電車が到着した時間と被っちゃって、改札口からお客さん達がぞろぞろ出てきてたし。

これだけ人が多いのなら仕方ないよね。


でも、鋭い潤くんなら大丈夫。きっと見つけてくれる。

もしダメだったら、先輩達と落ち合った後にこっそり連絡しよう。
< 247 / 316 >

この作品をシェア

pagetop