赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
ハイブランドが並ぶきらびやかな空間を、身を縮こませながら通過する。
まるで大人の世界に子どもが迷い込んだみたい。
本当にここに先輩達いるのかな。
今歩いている場所を伝えながら奥へ進んでいく。
「雨村さーん!」
「あっ、先輩!」
すると、前方の曲がり角から沢村先輩が出てきた。
電話を切って駆け寄ろうとした、その瞬間。
「風花……」
同じく曲がり角から、男の人が顔を出した。
今にも消えそうなか細い声で私の名を呼ぶ姿に、足を止めて目を丸くする。
面影を感じさせる切れ長の目と、黄みがかった茶色い髪の毛。
会わない間に少し声が低くなり、体つきも大きくなって、背もぐんと伸びたように見えた。
「つ、ばさ……?」
沢村先輩の背後から恐る恐る様子をうかがう彼。
それは──中学時代を最後に疎遠になった、もう1人の幼なじみの翼だった。