赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


なんで? なんで翼がここにいるの? 沢村先輩の友達って翼だったの?


そういえば先輩、中学時代からの仲って……。

私が出会う前に既に知り合いだったの……?




「久しぶり……」



呆然とする私に挨拶をしてきた翼。


表情は活気がなく、顔全体に不安が強く表れている。

以前の活発な彼はどこにもいなくて、もはや別人のよう。



「……っ、久し、ぶり」



冬なのに、室内なのにも関わらず、冷や汗が額を伝った。


年内には克服して、いずれは和解したいって。

また昔みたいに、みんなで会えるようになりたいって。

そう何度も口にした。


なのに、心臓の音は収まることを知らず、どんどん加速していく。


再会早々、ろくに挨拶もできない上に、目を合わせられないなんて。

相手が長年の知り合いだからって、失礼極まりない。


でも……っ。



「……ごめんなさい、ちょっと気分が悪くなっちゃったので……失礼しますっ」
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