赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「中学に上がってからは、僕を見る周りの目が一変し、チヤホヤされるようになりました。
それでも、彼女だけは昔と変わらず接してくれたんです。
この子を大切にしたいと心底思い、交際を始めました。
だけど……僕は彼女の優しさに甘えて、彼女が苦しんでいたことに気づけなかったんです」
ズシンと心が重くなる。
苦しみに気づけなかったって、私と同じ……。
「クラスでいじめられていて、精神がボロボロだったそうです。
時々疲れた顔を見せていたのは知っていたのに、大丈夫って言葉を鵜呑みにしちゃって……。
いなくなった後に気づくなんて、彼氏以前に医者失格ですよね」
「あの時追いかけていれば……」と、震える声が聞こえた後、抱きしめる腕の力が強くなった。
まさか、私達と重ねてるんじゃ……。
「なのであなた達の話を聞いた時、胸が苦しくなったんです。たとえ向き合うのが怖かったとしても、逃げたら絶対後悔してしまいます。あなた達はまだやり直せるチャンスがある。
僕はもう……会いたくても会えないから」