赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
最後に呟かれた言葉に激しい後悔を感じ、深く心を突き刺した。
もし、自分と似たような境遇や、苦しみを経験したことがある人が現れたら。
「助けたい」「力になりたい」「手を差し伸べたい」と思うのは自然なことかもしれない。
けれど……今の先輩には、そういった優しさが微塵も感じられない。
むしろ……。
「お相手が恐怖症の元凶である翼くんだと黙っていたことは謝ります。申し訳ありませんでした。
ですが……最初に説明しましたよね? お金は取らない代わりに色んな方法を試させてほしいって。
なので今回は、荒療治を試させていただきました」
耳元で囁かれ、ゾクッと悪寒が走った。
これは純粋な優しさなんかじゃない……!
執着だ……!
「さぁ、今からでも遅くありません。戻りましょう」
「いやっ!」
抱擁からは解放されたが、腕は解放されず。
再び百貨店へ引きずり込もうとする彼に必死で抵抗する。