赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
周囲の人達はチラチラと目を向けるも、全員無視。
カップルがケンカしてるとしか思ってないのだろう。
潤くんに電話しようにも、力で敵うはずがないんだから、一瞬でも隙を見せたらおしまいだ。
潤くんの警告を素直に聞いておけば。
出会った時にもっと警戒していれば、ここまで酷くはならなかったのかな。
ジワジワと目に涙が溜まってこぼれ落ちそうになったその時──。
「風花に何してるんですか……っ!」
突然後ろから腕を引っ張られて、安心感のある香りと温もりに包まれた。
頭上から聞こえた大好きな人の声。
「ケガしてない?」と気遣う彼の優しさに、抑えていた涙が溢れてしまった。
「あーあ、せっかく変更したのに。惜しかったなぁ。よくこんな環境で見つけられましたね」
「っ……吸血鬼ナメないでください」
上半身に身を委ねると、熱がこもった香りが。
これは、汗……? あと、すごく息切れしてる。
ずっと捜し回ってくれてたんだ。