赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「お気持ちはわかりますが、あなたの願望を押しつけないでください」
体を離した潤くんが、私を守るように前に立った。
目の前の頼もしい背中にギュッとしがみつく。
「ほぉ……正義のヒーロー気取りですか」
「当然です。大切な友達が苦しんでいるんですから。自分は助けられなかったからって、不機嫌になるのやめてもらえますか?」
まずい、2人ともヒートアップしてる。これじゃ傍から見たら修羅場だ。
改札付近よりも人は少ないけれど、ここはお店の中。このまま野放しにしておくわけにはいかない。
「おやおや、随分口が達者だこと。じゃああなたは、彼女が苦しんでいた本当の理由をご存知なんですか?」
「えっ?」
潤くんの声にピクッと反応した。
恐る恐る顔を上げて、肩の後ろから様子をうかがうと。
「宗星くん! 風花見つかっ……えっ? 潤?」
「え……もしかして、翼……?」
なんでここに? と、目を丸くする彼ら。
その横で、先輩が怪しく口角を上げた。