赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


千冬が言うには、揉めた日の夜に翼から打ち明けられたんだと。

ずっと知らない振りをしていたのは、また思い出して苦しませたくなかったから。

という、彼なりの優しさだった。



「なんで駅にいたの? 潤くんから話聞いたから……?」

「いや、実はここに来る前に……」



私達の場所を突き止めた理由を話し始めた千冬。

どうやら家で実験中に、翼から間違い電話がかかってきたみたいで。



「『ソウセイくん、今どこ?』って言われてさ。
沢村先輩と同じ名前だったから、なんかザワザワして」

「たったそれだけで問い詰めたの……?」

「いや、電話の向こうで駅のアナウンスが聞こえたから、もしかして近くに来てる? って思って。それで色々聞いたら、『これから風花に会うんだ』って言われて、急いで潤に教えたってわけ」



翼はてっきり、私が自分と会うのを了承したと思い込んでいたらしく。

その証拠に、『俺が来るって話してなかったの?』と、先輩に驚いていたそうだ。
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