赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「風花……?」
「……ごめん、ちょっと1人にさせて」
助けてくれた2人には申し訳なかったが、今にも感情が溢れ出てしまいそうだったので、半ば強引に部屋から押し出した。
優しい声、気遣い、切ない横顔、お茶目な笑み。
もちろん、全部が嘘ってわけじゃないのはわかっている。
けど……。
『逃がしませんよ』
『なので今回は、荒療治を試させていただきました』
脳内で彼の声が響き、背筋に悪寒が走った。
抱きしめられて、全身に鳥肌が立つ感覚。
鼓膜に響いた、ドスの利いた黒い声。
光のない瞳も、腕を掴む手の強さも。
全部、この目が、耳が、肌が覚えていて……。
毛布にくるまって襲ってきた恐怖を紛らわすも、落ち着きを失った心臓は暴れるばかり。
その翌日──彼と顔を合わせるのが怖くなって、ベッドから起き上がれず。
高校に入って初めて仮病で学校を休んだ。