赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
でも結局、幼稚園を卒園してすぐ、潤くんは引っ越してしまった。
『またみんなで遊ぼう』と約束を交わして、電車に乗っていった彼を涙目で見送ったのは、今もハッキリと覚えている。
しばらくしてから電話でやり取りを始めて、繋げるのが大変ということで文通に移行。
母に頼んで可愛い便箋を買ってもらい、放課後、翼と千冬と3人で手紙を書いた。
『うわぁ、ひらがなばっかり〜』
『うるさいなぁ! 翼は漢字使いすぎ! これじゃ潤くん読めないよ』
『ハッハッハ。ちゃーんとふりがなふってるから大丈夫』
『っ……! ムカつく〜!』
『はぁ、また始まった』
鉛筆を握りしめてプルプル震える私。
フフンとドヤ顔で笑う翼。
そんな私達を千冬が仲裁するというのが、お決まりのパターン。
難しい漢字を書く翼に対して、私は習ったばかりの簡単な漢字しか書けなかった。
今思えば、この頃から翼は物覚えが早く、私達が知らない言葉も理解できていた気がする。