赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―

校門で待つこと数分。険しい顔を浮かべた翼がやってきた。

借りていた本を返したいと言って、私の家まで来てもらうことに。



『ごめんね。ちょっと難しくて、読むのに時間かかっちゃった』

『別に。ちゃんと理解できたの?』

『っ、失礼な! できたよ! ……多分』

『自信ねーのかよ』



意地悪そうに口角を上げる翼。

前程うるさくはなくなったけれど、相変わらず平凡な私をいじめるのは好きなようで。


いつもならイラッとするいじりも、今回ばかりは少し安心感を覚えた。



『ねぇ……私、何か悪いことした……?』



横断歩道の前で立ち止まり、恐る恐る尋ねる。



『は? なんで』

『なんか、私にだけ冷たい気がして。顔も怖いし』

『はぁ? 元からこの顔なんだけど』



声のトーンが下がり、切れ長の目が鋭く光った。

確かに昔から厳つい顔だけど……今の翼は、私の知ってる翼じゃない気がして、ちょっとだけ怖い。
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