赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
『……じゃあ、なんで朝先に行ったの』
『それは……』
口を開いたタイミングで車が止まり、信号が青に変わった。
歩き出した彼を小走りで追いかける。
『私がいつも、勉強教えてって頼んでくるのが嫌だった?』
『違う。別に嫌じゃねーよ』
『じゃあ、前にくれたホワイトデーのクッキー、もらった瞬間落としてボロボロにしちゃったから?』
『それも違う。おっちょこちょいなのは知ってるし』
『なら、千冬と仲良くしてたのが気に食わなかったの?』
『なわけねーだろ。いつものことだし。そこまで心狭くねーよ』
心当たりがありそうなことを並べてみたけれど、どれもハズレ。
他にも色々聞いているうちに、あっという間に家に着いてしまった。
『……はい。難しかったけど面白かったよ。ありがとう』
『ん、どうも』
部屋から本を持ってきて返却。
満足げな顔を浮かべた翼を見て、ほんのちょっぴり緊張が緩むと、潤くんからの手紙を思い出した。