赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
突然隣に現れた翼にビックリして大声を上げた。
あぁいけない、ここ図書室だった。
『……また潤かよ』
『ん? 何か言った?』
『別に。ま、せいぜい頑張れば』
本に視線を戻した翼をキッと睨む。
もうっ! 本っ当腹立つ!
朝から顔色悪かったんだから、大事を取ってさっさと帰りなさいよ!
フンと顔を逸らしてペンを走らせる。
たとえ平凡だって、頑張れば何か1つくらい、得意なものが見つかるはずだ。
翼と負けじと勉強すること1時間。
『あいつ、一体どこ行ったんだろう。もうすぐ図書室閉まるのに』
『さぁ。トイレにでも行ってるんじゃない?』
帰る準備をする中、千冬は一向に戻ってこない翼を心配し始めた。
30分前に席を立ってから、1度も顔を見ていない。
荷物置きっぱなしでどこに行ったのやら。
……まさか、トイレでうずくまってたりして。