赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
突然怒鳴られて肩がビクッと揺れた。
今まで聞いたことがない声色に、心臓がバクンバクンと音を立て始める。
『先に帰ってろ』
『っ、でも……』
『いいから帰ってろ‼』
乱暴に言い放つと、俯いたままおもむろに立ち上がり、フラフラした足取りで窓際に移動した。
これだけ拒否しているんだから、帰ったほうがいいのかもしれない。
でも……。
『バカ! こんなに苦しそうなのに、放っておけるわけないでしょ⁉』
今朝から顔色が悪かった上に、少し息苦しそうにしていて。
しまいには熱でもあるのかと疑うくらいふらついていた。
もしこのまま1人にして、行き倒れてしまったら。
警備員の人が来るまで誰にも見つからなかったら。
おじさんとおばさんに、千冬に、潤くんにも合わせる顔がない。
『とりあえず出よう? まだ近くに先生いると思うし。家に電話してもらって迎えに……』
優しく諭しながらもう1度彼に触れた。
次の瞬間。
『さっきからピーピーうるせぇんだよ‼』