赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「いやぁぁっ! やだ! 離して! いやぁぁぁ!」
腕を振り払い、両腕で震える体を包み込む。
違う、わかってる。
ここにいるのは潤くんだってわかってる。
なのに……翼の声が、表情が、頭から離れなくて……。
「ごめんっ、もうしないから……」
「やっ! 触んないで!」
取り乱す私を落ち着かせようと手を伸ばしてきた潤くんだけれど、怖くて叩いてしまった。
いやだいやだいやだ。
どうして、なんで出てくるの。
やめてよ、やめてよ……!
「風花! しっかりしろ!」
叫び声を聞いた千冬が慌てて入ってきた。
潤くんを押しのけたかと思うと、ギュッと抱きしめてきた。
「大丈夫、ここには翼はいない。だから安心しろ」
「うぅっ……ああぁっ……」
背中を擦られて、涙がポロポロこぼれ落ちる。
今までずっと可愛い男の子だと思ってたのに。
こんなにも包容力強かったの……?
温もりに安心して自分も背中に腕を回し、彼の胸の中でひとしきり涙を流した。