赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


本当はちゃんと飲ませてあげたい。

……でも、またフラッシュバックしたらと思うと、怖くて勇気が出ないんだ。


それにもし思い出してまた取り乱しちゃったら、2度も彼を傷つけてしまう。


叫びながら拒否した上に、手を引っ叩いてしまったんだもん。

この状況もだいぶ失礼だけど、傷つけてしまうよりかはマシだ。



「ごちそうさま。ありがとう。具合はどう?」

「……少し良くなったよ」

「そっか。なら良かった」



「お大事に」と、潤くんは最後に優しく声をかけて階段を下りていった。

気を遣ってなのか、だんだん飲む量が減ってきている気がする。


まだ少し怖いけど、これ以上休んでみんなに迷惑はかけられない。

来週からはちゃんと行かなきゃ。



†††



──ピーンポーン。



「風花ー! 千冬くん来たわよー!」

「はーい」



翌週の月曜日。

1階から呼びかける母の声に返事をして、荷物を持って部屋を出た。


靴を履いて1度深呼吸し、ドアノブにゆっくりと手をかける。
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