赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「おはよ」
「……おはよう」
ドアを開けると、そこには顔が埋もれるくらいにマフラーを巻いた千冬が立っていた。
マフラーの下から見えた優しい笑顔。
安心して涙が溢れそうになって、グッとこらえたら。
「風花、おはよう」
千冬の後ろから、なぜか柚季ちゃんが顔を出してきた。
「な、なんでいるの……?」
「今日から登校するって聞いて、一緒に行きたいなと思って来ちゃった。もう体調は大丈夫なの?」
「うん……もう、治ったから……」
だんだん視界がぼやけ、頑張って唇を噛んでこらえるも。
「ごめん、私が色々言ったせいで……」
「柚季ちゃんは悪くないよ……っ」
溢れ出た涙はなかなか止まらず、地面にポタポタ落ちてシミを作っていく。
すると、目を滲ませた柚季ちゃんが正面からガバッと抱きついてきた。
「本当にごめんね。でももう大丈夫だから」
「よく頑張ったね」と、小さな声が耳元に響いて、さらに涙が溢れ出る。
涙声で背中を擦る友人の温もりに包まれた私は、1週間前と同じようにひとしきり涙を流したのだった。