赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「ほら行けよ! まだ時間あるし、迎えに行ってやれ」

「千冬……ごめん」

「バカ、謝んな。惨めに見えるだろ。その代わり、泣かしたら許さねーからな」

「うん……ありがとう」



背中を押してくれた千冬にお礼を言い、席を立って風花の教室がある校舎へ向かう。


あ、ちょっと待った。いきなり押しかけたらビックリするよな。一応連絡しないと。

スマホ、教室に置いてたっけ。



足を止めて方向転換。

した、その時──目の前に映る校舎がぐにゃりと歪んだ。


あっ、やばい。

そう感じてうずくまろうとしたけれど、既に全身には強い衝撃が走っていて。



「潤っ! 大丈夫か! 俺の声聞こえるか⁉」

「っ……ち、ふゆ……」



目を動かすと、血相を変えて駆けつけてきた千冬が慌てて袖をまくっている。


おかしいな、少量でも毎日もらってたのに。
年末年始に補充しなかったツケが来たのかな。


腕を差し出してきた千冬の姿を最後に、ぼんやりしていた視界が真っ暗になった。
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