赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「……治してくれませんか?」

「はい。もちろん」



物欲しそうにしている顔を見て頼んでみたら、待ってましたと言わんばかりに返事が。


あれ……? こんなにわかりやすかったっけ……?

微笑んでいるだけなのに、顔全面に「やった! 嬉しい! ありがとう!」って書かれてあるんだけど……。


ケガした人差し指に視線が落ちると、久しぶりの生温かい感触と、ビリッとした刺激が傷口に広がった。



「っ……ありがとう」

「ん。どういたしまして」



治療が終わり、手を離す。


久々だったからか、なんかすごくドキドキした。

いつもは恥ずかしいから、早く終わってほしいとしか思わないんだけど……今日はなぜか、名残惜しいなって思っちゃった。


どうしよう、好きすぎて頭おかしくなっちゃったのかな。

っていうかさっき、俺も好きだよって言われたんだっけ……。



「……どうしよう、もっと欲しくなっちゃった」

「へっ?」

「今日は指先からにしようか」

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