赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「え……?」
下げていた頭を上げて目を見開く。
「俺の家でみんなで遊んで、一緒に昼寝してた時に。風花が唇を切ってたから、治してあげたいと思って……」
嘘……そんなことがあったなんて知らなかった。
いや、寝てたから知らないのは当然なんだけどさ、普通治ってたら起きた後に気づかない?
出血してたんだから、多少痛みはあったはずなのに。どうして何も覚えてないんだろう。
ぐっすり眠って忘れちゃったのかな。
「黙っててごめんね」
「ううん。治してくれてありがとう」
てっきり3年前かと思ってたら、まさか10年以上前に奪われていたなんて。
ビックリしたけれど、相手が潤くんだと知ってちょっぴり嬉しくなり、正面からガバッと抱きついた。
「そんな前から私のことが好きだったの?」
「うん」
「でも私、潤くんのタイプと全然違うよ? おっちょこちょいだし、色気も余裕もないし」
「まぁ、確かにおっちょこちょいなのは否めないけど、俺は人間性に惚れたんだよ。風花は誠実さと優しさの塊だからね」
「なっ……!」