赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―

聞き覚えのあるセリフに、のどから変な声が出た。


それ、タチ悪吸血鬼だって言って、仕返しされそうになった時に言ったやつ……!

あの後、顔の傷を……っ。



──グゥゥゥゥ……。



「ごめん、お腹空いちゃった。飲んでいい?」

「う、うん。いいよ」



思い出して顔を熱くさせていると、タイミングがいいのか悪いのか、潤くんのお腹の虫が鳴いた。

そうだ、吸血させるために呼んだんだった。盛り上がっててすっかり忘れてた。


ブレザーを脱いで、カーディガンとシャツのボタンを外して服を開ける。


そして……。



「えっ……いいの?」

「うん。最終段階目前だし」



肩ではなく首を出した私に驚いている様子。


正直、まだ痛みに対する恐怖はある。

だけど、保健室で吸血された時に、潜在的な恐怖は消えたと確信して、今ならいけるかもしれないと思ったのだ。



「……わかった。怖くなったらすぐ言ってね」

「うん」
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