赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「じゃあね」と先生はにこやかに手を振って去っていった。


いつも落ち着いていて、丁寧な授業をする大上先生。

だけど、学生時代、覚醒した際に同じ狼族の友達と取っ組み合いのケンカをしたことがあるんだとか。

その話が校内に広まってしまい、陰で生徒達に怖がられている。

真面目に危険性を教えただけなのに、気の毒だ。



放課後。大上先生の机の上にノートを提出し、校門に向かった。


連絡先、待ち合わせ場所、時刻、ルートと、いざという時に駆け込める場所を再度確認。

今夜はいつもの満月じゃないから念入りにね。



「じゃ、また夜に!」

「うん! またね!」



自転車に乗って帰っていく柚季ちゃんを見送り、千冬と潤くんと一緒に帰路へ就く。


通学時間は徒歩15分。ご近所さんの千冬も同じくらい。

昔は潤くんもご近所さんだったけれど、今はおじいちゃんとおばあちゃんの家に住んでいるため、自転車で20分かかるらしい。
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