赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


「今日カメラ持っていきたかったけど、お父さんも使うみたいでダメだった」

「風花のお父さん写真好きだもんな。潤のお父さんも写真好きだったよな?」

「うん。引っ越す前に古いカメラもらったから、それ持っていくよ」

「やったぁ! ありがとう!」



穏やかな2人に挟まれながら横断歩道を渡り、別れ道に到着した。

潤くんとはここで一旦お別れ。

7時に迎えがてら吸血しに来るねと約束を交わし、千冬と2人で帰路に就く。



「随分嬉しそうだね。そんなに楽しみなんだ」

「そりゃそうでしょ! みんなで月食観賞だよ? 楽しみに決まってるじゃん!」



さっきまでは楽しそうに話していた千冬だけれど、なぜか今は表情が硬い。



「千冬は楽しみじゃないの?」

「楽しみだよ。楽しみだけど、俺がいる前で吸血の話は控えてほしい。生々しいから」



気まずそうに視線を逸らされた。

その横顔は、少し不満を抱えているようにも見える。
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