赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
潤くんにツッコまれ、持ってきたうちわで汗を乾かす。
バタバタしてたの、外にまで聞こえちゃってたかな。後ろにいる千冬が苦笑いしてるもん。
「あ、ヘアピンずれてる。ちょっと直すよ」
左のこめかみに彼の手が触れて、身体中に緊張が走る。
相手が潤くんだからかな? 髪の毛を触られてるだけなのに、胸がドキドキする。
制服じゃなくて私服だからってのもあるかもだけど。
いつもより距離が近く感じて、顔を直視できない。
「はい、できた」
「ありがとう……」
「おっちょこちょいなところ、変わってないね」
クスッと笑われて赤面する。
しっかりつけたはずなのに、急いで来たからずれちゃってたみたい。
準備は余裕で終わってたんだよ。
ヘアピン選ぶのに10分かかっちゃっただけなんだよ!
口に出すと余計笑われそうだったので、心の中で言い訳した。
「イチャついてないで早く食事終わらせて」
「はいはい」