赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―

「えっ、今⁉ ここ飲食禁止だから待てって」

「いいじゃーん。ここ2階だし、ちょっとくらいならバレないよぉ」

「いやでも周りに人が……んっ……」



隣の席のカップルの会話に聞き耳を立てる。

イチャつき始めた……というよりは、“吸血をし始めた”のほうが正しいかな。



「……席、変えようか」

「そうだね……」



スクールバッグと本を持って静かに席を立ち、1階に下りた。


この世界には、私達のような人間と、そうでない生き物が存在している。


知能に優れた狼族や、身体能力が高い猫族。
そして、鋭い感性と五感を持つ吸血鬼。


小学4年生まではみんな一緒のクラスで、覚醒時期に合わせて、5年生以降は種類別にクラスが分けられるよう決められている。


高校にもなると、男子校や女子校みたいに、狼族だけ、吸血鬼だけが通える学校もあるらしい。

ちなみにこの学校の生徒は、人間と吸血鬼だけなんだ。
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