赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「失礼しますっ」
ゼェハァと息切れしながら中に入った。
図書室を後にする生徒達とすれ違うように奥に歩を進める。
カウンター近くのテーブルを捜すと、椅子の下に落ちていた。
良かった~。じゃなきゃ明日筆記具借りるところだったよ。
胸を撫で下ろして立ち上がると、いつの間にか他の生徒達はいなくなっていて、生徒は私1人だけになっていた。
閉館時間まで残り10分。
返却コーナー見ようかなと思ったけど……先生も早く帰りたいだろうし。また今度でいいや。
筆箱をバッグに入れて出入口に向かい、ドアノブに手をかけた──その時。
「────……たす……けて……」
ドサドサっと何かが落ちる音と共に、掠れた声が聞こえた。
ビックリした……。
さっきのは本が落ちた音、だよね? 上のほうから聞こえたような。
「あら、まだ誰かいるのかしら」
「私、見てきます!」