赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
【だろう? というか、あんな状況で彼女作ろうとか考える暇もなかったと思うぞ】
そうだった。
中学時代から去年まで、自分に合う吸血相手が見つからなくて悩んでたんだった。
恋愛か毎日の食事かなら、そりゃ命に関わる食事を優先するよね。
【そもそも、好きな服を着ようって決めたなら、お気に入りの服を着れば良くない? 好きだからこそ悩むのはわかるけど、幼なじみなんだからもっと気楽に……】
「そうだけど! 少しでも可愛いって思ってほしいんだよ!」
千冬の声に被せるように言い放った。
もうっ、千冬も柚季ちゃんも気楽気楽って同じこと言って!
幼なじみでも、10年も会ってなかったんだからそう簡単にはいかないんだよ。
「デート経験がない私には難しすぎる……」
【大丈夫。理解不能だった物理のテストで70点取れたんだから】
「物理のテストよりも男心のほうが難しいよ。千冬も古典と女心、難しいほうを選ぶなら女心じゃない?」
【……まぁ、ね】
「ほらやっぱりぃー」