赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


先週木曜日に行われた、苦手教科のテスト。

心配していた物理は赤点を避けることに成功し、平均点を上回った。

千冬と潤くんも7割以上取れたんだって。


物理や数学は公式があるから解けるけれど、男心は人それぞれ。公式はおろか、教科書すらない。

恋愛の方程式は難しいってよく言われるの、あれ本当だったんだなぁ。


ブツブツ不安を吐き続けていると、電話口の向こうから小さな溜め息が聞こえた。



【自信を持って好きな服を着ろ! 大事なのは清潔感と笑顔だ!】

「そ、その2つだけでいいの……?」

【俺が思う最低限はな。あとはリラックスすれば大丈夫。ったく……2人して同じ質問ばっかり。何回も答える俺の身にもなれっての】



少々投げやりに助言を吐いた千冬。

返事もお礼も言う間もなく、ブツッと電話が切れた。


……なんか、イライラしてなかった?
私がチキンだったとはいえ、捨て台詞まで吐くなんて。

またやきもちを……寂しい思いさせちゃった?


スマホ画面を見つめながら、「ごめんね」と小さく呟いた。
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